映画「グッドナイトマミー」あらすじ

鑑賞者の目線となるのは双子のエリアスとルーカス。舞台はオーストリアの森とトウモロコシ畑に囲まれた静かな場所にぼつんと建つ大きな一軒家。美容整形手術から帰ってきた母親をふたりは出迎えるが、人が変わったかのように冷たい態度をとる母親に対して「偽物なのではないか」という疑念を抱き始めます。母親はエリアスの分しか食事を準備せず、暴力もふるい、ふたりがこっそり飼っていた猫も殺してしまいます。録音していた母親の声を聴いたり、アルバムを見たり、ネットで検索したりしますが、確証は得られません。そこでふたりは母親がぐっすり眠っている間にガムテープで手足をベッドにくくりつけ、拷問を始めます。母親とそっくりな女性とのツーショット写真をつきつけて問い詰め、母親の瞳の色はブラウンなのになぜブルーなのかと詰問し、それでもその女性は友だちで、目の色が違うのはカラーコンタクトだと言われ、確証がありません。今度は虫眼鏡で頬を焼いたり、接着剤で口をくっつけたりと拷問はエスカレートしていきます。シーツ交換の際に母親はなんとか逃亡を図りますが、ピアノ線で罠が仕掛けられており失敗。さらなるお仕置きを受けることになります。目にも接着剤を塗り、死んだ猫を入れたアルコール入りの水槽に火をつけて、エリアスは「ママはどこ?」と尋ねます。母親は「ルーカスにも話しかけるし、食事もふたりぶん作るから」と言い、続けて「ルーカスが死んだのは事故だ」と言います。火はカーテンに燃え移り、あっという間に家中を炎が包みます。実は偽物、というか実在しなかったのはルーカスのほうだったのだ、というオチです。

映画「グッドナイトマミー」感想

森と畑に囲まれ、いわば隔絶された世界で淡々と進んでいく映像にはひたひたと迫ってくる静かな凄みがあります。セリフも少なく、効果音もなく、鑑賞者は登場人物の行動や周りの物など細かなことをよく観察して状況を把握していく必要があります。包帯姿の母親の異様さは言うまでもありませんが、エリアスが見る夢や猫とゴキブリの死などなにかを暗示していそうな不気味なものが随所にちりばめられています。それらを統合して考えながら見ていると、だんだんとこの映画に感じる違和感が強くなっていき、「ルーカスに話しかけているのはエリアスだけしかいない」ということに気づいたとき、今までの奇妙さがすべてすとんと集約されていくような感覚がありました。拷問をしているのが子どもだけに、そして「ママを返してほしい」という純粋な動機だけに、余計残酷に映りました。炎に包まれる家を見ながらシューベルトの子守歌を歌うラストシーンは幸せそうな雰囲気のなかにゾクリとするものがありました。盛り上がりやパッとするシーンはないですが、今でも目の奥にこびりついて離れない不思議に惹かれる作品でした。